経産省は月内にも産業技術環境局長の私的検討会を立ち上げ、企業に温室効果ガスの削減義務を課す国内排出権取引制度の検討に着手する。
この話に引っ掛けて日経が20日朝刊で、排出権取引制度の導入に反対していた経産省が「方針転換した」と報道した。議論すら嫌がっていた経産省が制度導入の是非について検討に入るのだから、「方針転換」と言えぬこともないが、導入の方針を固めたとまでは踏み込んでいない。
日経の報道があった20日、日本経団連の御手洗冨士夫会長が大分市で記者会見し、経産省が検討に入るEU型(キャップ&トレード方式)の排出権取引制度について「EUや米国などの世界的な潮流を踏まえ、考えていく必要がある」と発言。新聞各紙は、経産省と一緒に反対を唱えてきた御手洗会長が「方向転換を示唆した」(日経)などと報じた。
首相官邸からも“火の手”が上がる。町村信孝官房長官が定例会見で、近く発足する地球温暖化に関する有識者会議(座長・奥田碩内閣府特別顧問)で「排出権取引問題も取り上げられることも考えられる」と語り、制度の導入論議が急速に進む可能性を示唆した。
この3つのニュースをどう読むか。
まず経産省。省内からは「方針転換は時間の問題」との声が漏れてくるが、大臣も事務次官も未だに「断固反対」の強硬姿勢をとり続ける。したがって局長の私的検討会における議論は、とりあえず白紙諮問の形でスタートすることになる。
次に経団連会長の「態度軟化」(サンケイの見出し)について。20日朝、経産省の鉄鋼課には日経の「方針転換」報道の真偽を確かめようとする高炉メーカー各社からの問い合わせが殺到、電力などCO2排出大手を企業所管する課でも同じような光景が見られた。
そんな中での御手洗発言である。従来のスタンスを軟化させるところまでの準備と決意があっての発言と見るには無理があるような気がする。
もう1つ。町村官房長官の発言だが、これはごくごく当たり前の、平々凡々な発言内容で、ニュアンスを読み取る価値も必要もない。ついでに言うと、官邸主導で立ち上げる有識者会議も、福田首相が排出権取引制度の導入を考えているのであれば、委員の一人ひとりを口説き落とすくらいの覚悟で会議に臨まないと、ただのヒマ潰しに終わるだろう。
経産省の検討会、経団連会長発言、官邸の有識者会議と3つの話が重なったが、排出権取引制度の導入機運が高まる兆しは、…まだ見えてこない。いずれは、導入という結末になるが、この辺で受け身の姿勢を転換すべきだとの声は、政・官・業ともにまだ水面に浮上してこない。

